ICT施工・建設DXは北陸の施工管理の仕事をどう変えるか
- 国土交通省は2016年からi-Constructionを推進しており、北陸でも公共工事を中心にICT土工や3次元測量の導入が進んでいます。
- 僕の体感値では、ICT施工導入現場は出来形管理・書類作成の時間が2〜3割ほど減る一方、データを読み解く新しいスキルが求められます。
- ICT建機を扱える人材の不足は北陸の地場ゼネコンで特に顕著で、資格の有無より実機での操作経験が採用や配置の決め手になる傾向があります。
「ドローンで測った土量のデータ、これ本当に現場で使えるんですか」
5年ほど前、ある若手の現場代理人からこう聞かれたことがあります。彼が担当していた現場では、元請の方針で初めて3次元測量を導入することになっていて、現場側は正直なところ半信半疑でした。結論から言うと、ICT施工・建設DXは施工管理の仕事を「なくす」ものではなく、「役割を配置し直す」ものだというのが僕の体感値です。測量や書類作成に費やしていた時間の一部が減る代わりに、集めたデータをどう読み解き判断するかという仕事の比重が増えていく。この記事では、北陸の現場でICT施工がどこまで浸透しているか、実際に何が変わったか、そして皆さんのキャリアにどう影響するかを、現場での経験をもとに整理します。
0. 結論:ICT施工は「省人化」ではなく「役割の再配置」
先に結論を書きます。国土交通省は2016年から「i-Construction」を掲げ、ICT土工・3次元測量・電子納品といった取り組みを公共工事を中心に推進してきました。北陸3県でも、公共工事の発注要件にICT活用が組み込まれるケースが増えており、地場ゼネコンや中堅建設会社でも対応を求められる場面が増えているというのが僕の体感値です。ここで誤解してほしくないのは、ICT施工が進んでも施工管理という仕事そのものがなくなるわけではないという点です。測量にかかる人手や時間は減りますが、その分、データを工程管理や品質管理にどう活かすかを判断する仕事の比重が増えていく。効率化というより、仕事の中身の再配置だと捉えた方が実態に近いと僕は考えています。この記事では、その再配置がキャリアに何を意味するかまで踏み込んで書いていきます。
1. ICT施工・建設DXとは何か ― 北陸での導入の実態
まず言葉を整理します。ICT施工とは、ドローンやレーザースキャナーによる3次元測量、その測量データをもとにしたICT建機による施工、そして電子納品までを一連の流れとして行う施工方法を指します。建設DXはより広い概念で、施工そのものだけでなく、書類作成・工程管理・原価管理といった間接業務のデジタル化まで含みます。北陸では、公共工事の発注者要件としてICT土工が指定される案件が増えてきており、それを受注する地場ゼネコンが順次対応を進めているというのが実態です。ただし、対応の進み方には会社ごとに差があります。公共工事の比率が高い会社ほど導入が早く、民間工事中心の会社では従来のやり方のままでも現場が回っているケースも少なくない、というのが僕がここ数年で見てきた傾向です。設計事務所や測量会社との連携が必須になる場面も増えており、施工管理には測量業者とのやり取りをスムーズに進める調整力も新たに求められるようになってきました。もう一つ付け加えると、雪の多い北陸では冬期に屋外作業が制限される期間があり、その期間にデータ処理や電子書類の整備を前倒しで進められるという点で、ICTと相性が良い面もあると僕は感じています。
2. 現場で何が変わったか ― 測量・出来形管理・書類作成の三点
実際に導入が進んだ現場で何が変わったか、僕が見聞きした範囲で整理すると、大きく三点あります。一点目は測量です。従来は複数人で丸一日かけていた土量の測量が、ドローンによる空撮とソフトウェアでの点群処理によって、体感で半日程度に短縮される場合があります。二点目は出来形管理です。これまでは現場で巻き尺やレベルを使って手作業で計測し、記録用紙に書き写していた工程が、3次元データと設計データを重ね合わせることで、差分を自動的に確認できるようになりました。三点目は書類作成です。電子納品の仕組みが整った現場では、写真管理や出来形管理資料の作成にかかる時間が体感で2〜3割ほど減る印象があります。ただし、これらの効率化はソフトの操作に習熟していることが前提で、導入初期はむしろ従来より時間がかかるという声も現場からよく聞きます。冒頭に紹介した若手の現場でも、最初の1か月は点群データの処理でつまずき、結局ベテランと二人がかりで夜まで格闘していました。慣れるまでの数か月をどう乗り切るかが、実際には導入成功の分かれ目になっていると僕は感じています。逆に言えば、その山を一度越えた人は「使える人材」として社内でも重宝される、というのが僕の観測です。
3. ICT施工導入企業と未導入企業、キャリアはどう変わるか
ここで一つ、比較の視点を入れておきます。ICT施工に積極的に取り組んでいる会社と、そうでない会社とでは、施工管理として身につくスキルの中身が変わってきます。下の表は、僕が北陸の現場で見てきた傾向を整理したものです。
| 比較項目 | ICT施工導入が進んだ会社 | 従来手法が中心の会社 |
|---|---|---|
| 身につくスキル | 3次元データの読解・ソフト操作・工程シミュレーション | 現場での目測・段取り・職人との調整力 |
| 若手の裁量 | データ管理を任されやすく早期に責任範囲が広がる傾向 | 現場経験の積み重ねで徐々に裁量が広がる傾向 |
| 今後の求人ニーズ | 公共工事の受注拡大とともに需要が増える見込み | 民間の小規模工事を中心に一定の需要が続く見込み |
| 教育コスト | 初期は高いが、慣れれば残業時間の削減につながりやすい | OJT中心で教える側の負担が読みにくい |
僕の体感値で言うと、どちらのスキルが優れているという話ではなく、皆さんが今後どちらの案件を主戦場にしたいかで、身につけるべきスキルの優先順位が変わってきます。公共工事を中心にキャリアを積みたいのであれば、ICT施工の経験は早めに触れておいた方がいい領域だと考えています。逆に民間の改修工事や小規模案件が中心の会社では、従来型の段取り力や職人との調整力の方が今も評価の中心になっている、というのも実態です。ここを取り違えて「ICTができないと生き残れない」と焦る必要はない、というのが僕の正直な感覚です。
4. よくある失敗と対処 ― ICT武装しても現場は回らない
ICT施工を導入する際に、僕が実際に見てきた失敗パターンをいくつか紹介します。一つ目は、ソフトやドローンを導入したものの、操作できる人材が現場に一人しかいなかったケースです。その担当者が休むと現場のデータ処理が止まってしまい、結局、紙と手作業の記録に逆戻りするという事態が起きました。対処としては、少なくとも二人以上が基本操作を扱えるようにしておくことが重要だと感じています。二つ目は、3次元設計データの作成を外部の測量会社に丸投げしてしまい、現場側がデータの意味を理解しないまま出来形確認を進めてしまったケースです。データの数値だけを追いかけて、実際の地形や施工状況との整合性を見落とし、手戻りが発生しました。対処としては、外部委託する場合でも、現場担当者がデータの読み方を最低限理解しておくことが欠かせません。三つ目は、導入初期の教育コストを見込まずに現場へ投入してしまい、慣れないソフト操作に時間を取られて工程が遅れたケースです。導入初期は従来より時間がかかることを前提に、工程に余裕を持たせておくことが現実的な対処だと僕は考えています。四つ目として、ICT施工の経験を積みたいという理由だけで転職先を選び、実際には現場でほとんど活用されておらず求人票と実態が食い違っていたという相談も受けたことがあります。「ICT施工を推進」と書いてあっても、実際は年に数件の指定案件だけで、大半は従来手法という会社もありました。導入状況は面接で具体的に確認しておくべき項目だと感じています。五つ目は、ドローンや3次元データばかりに気を取られて、足元の安全管理や職人とのコミュニケーションがおろそかになったケースです。どれだけICTで武装しても、現場を実際に動かすのは人だという原則は変わりません。ツールはあくまで判断を助ける道具であって、現場を回す力の代わりにはならない、というのが僕の実感です。
5. 今日からできる実務手順 ― ICTスキルをキャリアに変える
最後に、皆さんが今日から始められる具体的な手順を、所要時間の目安つきで整理します。
| ステップ | やること | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 勤務先または志望先がICT土工・3次元測量にどこまで対応しているか求人票や会社サイトで確認する | 15分 |
| 2 | 国土交通省・各県の建設業協会が開催するICT施工講習会の開催情報を調べる | 20分 |
| 3 | 現場でドローン測量や3次元データ処理の場面があれば、担当者に同行させてもらう | 現場の都合次第 |
| 4 | 面接では「ICT施工の導入状況」「教育担当の有無」「講習費用の負担」を具体的に質問する | 面接当日 |
| 5 | 転職後は最初の半年でソフトの基本操作を一通り触れる機会を意識的に作る | 入社後半年 |
これらの手順を踏むことで、ICT施工の経験がないことを不安に感じている方でも、実務に触れる入り口を自分で作っていくことができます。特に大事なのはステップ4です。求人票の「ICT対応」という一言だけを信じて入社すると、実態とのギャップに面食らうことがあります。導入状況を数字で聞く、たとえば「年間で何件くらいICT案件がありますか」と具体的に尋ねると、会社側の本気度が見えてきます。資格の有無よりも、実際に操作した経験の方が採用や配置の場面で評価される、というのが僕がここ数年の面談で感じている傾向です。逆に言えば、まだ経験がなくても「学ぶ姿勢と入り口を自分で作れること」を示せれば、十分に評価される余地があると考えています。
(結論)
ICT施工・建設DXは、施工管理という仕事を消す変化ではなく、仕事の中身を組み替えていく変化だと僕は考えています。測量や書類作成にかかっていた時間が減る一方で、データを読み解き判断する仕事の比重が増えていく。皆さんがどの規模の会社で、どんな種類の工事を主戦場にしたいかによって、身につけるべきスキルの優先順位は変わってきます。公共工事を中心に据えたいのであれば、ICT施工の経験は早めに触れておいて損はありません。まずは自分の勤務先や志望先がどこまで対応しているかを確認するところから始めてみてください。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. ICT施工を経験していないと施工管理として不利になりますか
現時点で必須の経験ではありませんが、今後は経験の有無が採用や案件配置の場面で差になっていくというのが僕の体感値です。特に公共工事で3次元データを扱う現場では、点群データやICT建機に触れた経験がある人が優先的に配置される傾向があります。未経験でも、勤務先がICT施工を導入しているなら測量や出来形確認の場に同行させてもらうところから始めれば十分に追いつける領域だと考えています。
Q. ICT施工を学ぶにはどうすればいいですか
国土交通省や各県の建設業協会がICT施工の講習会を開催しており、まずはそこに参加するのが実務的な近道です。加えて、勤務先がドローン測量やICT建機を導入しているなら、実際の測量や出来形管理の場に立ち会わせてもらうことが最も定着しやすいというのが僕の体感値です。座学だけで終わらせず、操作経験を伴わせることが習得のスピードを左右すると感じています。
Q. ICT施工の導入は北陸の中小建設会社でも進んでいますか
会社の規模や受注する工事の種類によって差が大きいのが実態です。公共工事を多く受注する会社ほどICT土工や3次元設計データの活用を求められる場面が増えており、対応を進める会社が体感として増えています。一方で民間の小規模工事が中心の会社では、従来の手法のままでも現場が回っているケースも多く残っているというのが僕の観測です。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。